コラム

2020年までに完了しておきたい3つのこと ~ ポスト五輪に向けた企業の舵とり ~

企業を取り巻く環境は、この先どうなっていくのか?

アベノミクスが成功だったかどうかは別として、日本経済が少し活性化したのは事実である。

図表1に2000年以降の日経平均株価の推移を示したように、2011年11月から株価は上昇を始め、安倍首相の就任から1年間で日経平均は6割以上も上昇し、一時は2万円台まで回復した。

しかし、企業を取り巻く環境は相変わらず不安定であり、「オリンピックまでは大丈夫かも知れないが、五輪後にどうなるか非常に不安である」というのが経営者の本音ではないだろうか。

【図表1】日経平均株価の推移(月次、初日終値ベース)

201701図1

中国や新興国の成長にブレーキがかかり、欧州にも大きな不安がある中で、金融緩和によって押し上げられた株価が再び暴落するリスクは想定しておくべきだろう。また、少子高齢化や労働人口の減少は着実に進んでいる。先々を見据えながら環境の変化を捉え、経営の舵をうまく取っていけるかどうかが、企業や事業の明暗を分けることになるはずである。

 

環境の波にうまく乗れている状態と乗れていない状態

筆者は企業を支援する立場として、環境が変化する中で企業がいかに舵を取るべきかを考えてきた。

ある波を想定してみる。あるところで環境が大きく悪化して低迷した後、少し回復してから後頭打ちになり、再び悪化するといった波である。もちろん業界によって環境の捉え方は異なるはずだが、ここでは一つの仮定を置いて、環境変化に応じた企業の舵とりについて考えてみたい。

図表2に環境変化の波にうまく乗れている状態とそうでない状態の例を示した。2つの状態の大きな違いは何だろうか?

 

【図表2】企業を取り巻く環境の波と企業経営の舵とりの例

201701図2

 

うまく乗れていない状態では、短期の業績にとらわれて、先々の準備を進められていないことに気がつくだろう。一般的に環境が悪い時ほど、設備などの投資額は抑えやすい。不景気に全国の店の看板を一新したという例もある。「もう少し状況が良くなって、収益が改善してきたら投資しよう」という考えでは、投資額が膨らんでしまうこともある。

また、人材の採用においては、企業が積極的に人を募集していない時ほど優秀な人材を採用しやすい。環境が悪化した時に苦し紛れに人員を削減し、状況が良くなってきてから採用に動くようでは、優秀な人材を採用できないし、採用に時間がかかるために戦力化も遅れてしまう。

つまり、波にうまく乗れるかどうかは、環境悪化を想定した収益改善プランの検討・準備、将来の収益源となる事業への投資、事業の強化と連動した組織の強化や人材の採用を早い段階から進めておけるかにかかっている。

果たして東京五輪まで4年を切った今は、環境変化の波のどのあたりに位置するのだろうか? リーマンショックで環境が悪化して低迷した後にアベノミクスで回復してきた時期、図表2で言うとAのタイミングだと考えた時に、皆さんの会社や事業はうまく波に乗れていると言えるだろうか? もし環境の波にうまく乗れていて、収益力を確実に高めながら将来の準備も進めてきたのだとしたら、(決して安心はできないが)業界の中でも優位なポジションを期待できるはずだ。

しかし、環境の波に今一つうまく乗れておらず、アベノミクスで何とか息を吹き返したものの、収益性が低い状態で推移し、次の事業のための投資や人材の採用をうまく進められていないのだとすると、この先は相当苦しむことになるだろう。 それでは2020年までに一体何をしておくべきなのか?

 

東京オリンピックまでに完了しておきたい3つのこと

急激に環境が悪化する事態も想定して、次の3つの完了を目指すべきである。

 

1.既存事業の収益性と強靱性を高める

まず何と言っても既存事業を強くすることだ。内閣府の『平成26年度版高齢社会白書』によると、65歳以上の人口割合が2025年には3割に到達する。多くの業界で国内市場が縮小していくだろう。売上が2割落ちても収益を確保できる状態を目指すなど、危機感をもって取り組むことで、一定の達成感や自信を早く得ることが肝要である。

また、複数の事業を有する企業では、一定の収益をあげているが故に安心してしまっている事業を、敢えて外に出して成長企業へと巣立たせることも必要だろう。

2.新規事業の収益化の目処を立たせる

既存事業の縮小が避けられない場合、新規事業を開発する必要があるが、環境が悪い時に新しい商品やサービスを投入することは避けるべきである。消費者や企業の購買意欲が低い時には、何をやってもうまくいかないことが多い。今は新しい事業を試せる限られた時期であるため、狙いを定めてトライアルを行い、収益化の目処を立たせておきたい。

3.生産性を高めて筋肉質な組織をつくる

既存事業の収益力を高めつつ、新規事業の開発にリソースを投入するためにも、生産性を高める必要がある。売り上げが少し増えて忙しくなったからといって増員に走ることは得策ではない。特にスタッフ部門は、アクションに繋がらない付加価値の低い業務もまだまだ多く、人に仕事を与えるための仕事すら存在している。業務を抜本的に見直して既存事業を強化しながら、生産性だけでなく組織の課題解決力を高めていくことが特に重要である。

 

ポスト五輪の不安をチャンスと捉えて挑戦していく

これまで環境の波と経営の舵とりについて述べてきたが、場合によっては「お先真っ暗」という印象を与えてしまったかも知れない。しかし、物は考えようである。ここでうまく舵を切った企業は業界でのポジションを上げることも可能だ。

経営陣に求められるのは、環境変化の波を捉える“冷静さ”と中長期の視点で舵を切る“勇気”、そして社員を前向きにする“熱意”ではないだろうか。

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●大國仁(おおくに・じん)

東京工業大学大学院修了後、三菱自動車工業でマーケティング戦略策定や新型車の立ち上げに関わる。戦略系コンサルティング会社のジェミニ・コンサルティング (現Pwcストラテジー)などを経て、2002年11月ジェネックスパートナーズの設立に参画。大手サービス業や自動車メーカーなどに対して、シックスシグマ・ウェイを活用した全社変革支援を経験して独立。学生時代はファミリーレストランで5年間アルバイトとして働いた経験があり、業績の良い店舗と悪い店 舗を運営する店長の違いについての実体験をもってサービス業を支援している。

●株式会社ACWパートナーズ
企業の永続的な成長を、パートナーとして支援する経営コンサルティング会社。
社員の方々が自律的に動き、組織として成功体験を積みながら、自社独自のウェイを強めていくための各種サービスを提供する。
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