コラム

どんぶり勘定は命取り。店舗の収益モデルとは?

 

利益の構造を捉えて適切な手を打つための利益管理が求められる

多くのサービスチェーンが店舗数を増やしながら成長していた右肩上がりの時代には、「店舗の売り上げ、特に前年比を管理すればよい」という考え方もあった。利用客を開拓しながら、売り上げを伸ばすことは比較的容易であったからだ。

しかし多くの業態が店舗数を増やし、飽和状態になった。他店との競争も激しくなった。つまり成熟期を迎えた。前年比を年々上げることなど不可能であり、維持することすら難しくなっている。成熟期では、個々の店舗の収益を健全化できるかどうかにかかっている。

本レポートでは、店舗の収益を健全化するために、客観的なデータに基づく収益モデルを活用することについてご紹介する。

 

店舗収益モデルとは?

まず、店舗の収益モデルとは次のように定義する。

店舗収益モデルの定義:

店舗収益の改善の基準となる“客観的なデータに基づく店舗の収益算出式”

店舗の収益 = f( x1 , x2 , x3 , x4・・・・)

※ x1~x4は収益に影響を及ぼす因子

難しく感じるかも知れないが、2つのステップを踏めばモデルは構築できる。

ステップ①: 収益を構成する要素に分解する

ステップ②: 分解した要素ごとにモデル式をつくる

もう少し詳しく解説していこう。

ステップ①: 収益を構成する要素に分解する

店舗の収益を売り上げと利益に分け、さらに次々と切り分けしていく(図表1)。どこまで分解すべきかの判断は、次の2点を考慮すると良い。

- 収益への影響が大きいところほど分解されているか?

- 改善方法が大きく異なるものは、別の要素に切り分けられているか?

2つ目は特に重要である。改善方法が異なるということは、その発生原因も異なる。最終的な目的である収益の改善において、原因の特定が結果を左右するからだ。

【図表1】収益を構成する要素への分解(飲食店の例)

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次に、このように分解された構成要素ごとにモデル式をつくっていく。

ステップ②:分解した要素ごとにモデル式をつくる

モデル式をつくるためには、当然定量データが必要になる。図表1の収益の構成要素の1つ“時間あたり人数”の例を見てみよう。その構成要素に大きく影響を及ぼす変数を横軸に取って、店舗の分布とその傾向を確認すると良い(図表2)。

【図表2】モデル式の作成イメージ

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“時間あたり人数”の値が小さいほど効率性が高いと言える。“時間あたりの売り上げ”が高くなるにつれて“時間あたり人数”が高くなる傾向がある。もう少しよく見てみると、“時間あたり売り上げ”が一定レベル以下、または一定レベル以上になると、効率性が今一つ上がっていないことが分かるだろう。

図に示した通り、これらには原因がある。“時間あたり売り上げ”の標準的な範囲においては、“時間あたり人数”は“時間あたり売り上げ”に比例するとして、モデル式を設定できる。明らかに生産性の低い店舗を除いて近似直線を引くといった具合だ。

それではこのモデルを使って、店舗の収益を改善していこう。

 

店舗収益モデルによる店舗収益の改善

店舗によって条件に様々な違いがある中で、大きく影響する変数をモデル式に織り込むことで、収益の状態を客観的に判断できる。収益モデルによって算出された“理論利益”に対する“実際の利益”を分析するといろいろなことが見えてくるからだ(図表3)。

【図表3】店舗収益モデルの活用イメージ

(a)様々な変数による分析を通した収益改善

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(b)出店からの経過月数による分析

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様々な変数を横軸にとることで、似たような条件下にありながらも利益にバラツキが出ていることが発見できる。これは改善の機会を見つけるヒントとなる(図表3-a)。例えば、横軸を店舗の床面積とすると、店舗の規模別に好不調が確認できる。図のような分布となった場合は、大規模店のてこ入れ策を検討すべきだろう。また、横軸を出店からの経過月数とすると、新規出店がうまくいっているのかを早期に判断するための材料となる。(図表3-b)

 

モデルはあくまで基準。改善のヒントとなるもの

最後に、収益モデルにはよくはまる落とし穴がある。本部が「この店では、この数値になるはずだ。」と店舗を締め上げてしまうことだ。繰り返しになるが“モデルはあくまで基準”であり、店舗が利益改善に取り組む際のヒントとして提供する方がよい。

本部と店舗が改善のヒントとして位置づければ、最初から精緻なモデルを構築する必要もなくなる。収益改善のヒントとして活用しながら、自社に合ったモデルをじっくり醸成していくことを推奨したい。

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●大國仁(おおくに・じん)

東京工業大学大学院修了後、三菱自動車工業でマーケティング戦略策定や新型車の立ち上げに関わる。戦略系コンサルティング会社のジェミニ・コンサルティング (現Pwcストラテジー)などを経て、2002年11月ジェネックスパートナーズの設立に参画。大手サービス業や自動車メーカーなどに対して、シックスシグマ・ウェイを活用した全社変革支援を経験して独立。学生時代はファミリーレストランで5年間アルバイトとして働いた経験があり、業績の良い店舗と悪い店 舗を運営する店長の違いについての実体験をもってサービス業を支援している。

●株式会社ACWパートナーズ
企業の永続的な成長を、パートナーとして支援する経営コンサルティング会社。
社員の方々が自律的に動き、組織として成功体験を積みながら、自社独自のウェイを強めていくための各種サービスを提供する。
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