コラム

事業を強化するためのデータの活用方法 ~ ビッグデータの前に押さえておきたい基礎 ~

 

企業に蓄積される様々なデータ

ここ数年、ビッグデータへの関心が高まってきた。様々な成功事例も紹介されており、事業強化の可能性について模索している企業も多いのではないだろうか。一方、事業課題の解決を支援している立場としては、「そもそも基本的なデータすら十分活用できていない」と感じることも多い。今回は、事業の強化につなげることを前提として、データ活用のポイントを紹介したい。

 

データを見て活用方法を考える

例えば、自動車ディーラーで次のような顧客データが管理されていたとしよう。

【図表1】自動車ディーラーで管理されている顧客データ(例)

201608図1

 

これらのデータがどのように活用できるか考えてみていただきたい。データを並べられて「活用できるか?」と聞かれると、少し難しく感じるかもしれない。データとは、そういうものである。まずは、顧客に接している営業担当者の視点で考えてみよう。

最初の方のデータ(①~⑨)は、顧客への訪問や連絡のために必要なものである。車検などの点検時期に来店してもらうためには、⑬購入日や⑯次の車検日をもとに連絡を取ることもあるだろう。顧客との会話においては、⑪購入車種、㉓使用目的や㉔趣味、家族の情報(㉗~㉚)といったデータも参考になる。

次に、営業店の管理職の視点ではどうだろう? まず、どのような顧客がいて、どのくらいの利益につながっているのか(⑳~㉒)を掴むことが大切だ。更には、②住所や⑩営業担当者のデータから強い地域はどこか、営業担当者の割り振りは適切かどうか、といったことも気になるだろう。

仮に、このような営業店を複数展開している会社があったとして、全営業店を統括する本店の視点ではどうだろうか。新型車への買い替えを促進するキャンペーンを企画した場合、ターゲットとする顧客を、⑪購入車種、⑫グレード、⑬購入日といったデータから選定し、ダイレクトメールを送付することもあるだろう。

データの活用について少しイメージできただろうか?

しかし一方で、先にあげたデータの中には、「実際にどのくらい活用しているのか」と疑問符がつくデータもあったかも知れない。近年の情報システムの進化は目覚ましい。端末の処理スピードもさることながら、通信スピードや環境の整備が向上してきた。「こんなこともできる」「あんなことにも活かせる」と活用の可能性が広がったのは事実だが、十分に活用し切れていないと感じることも多いのではないだろうか。

 

アクションに繋がるデータ活用の5つの目的

これまでに事業課題の解決を支援してきた経験でわかったことは、データを活用する目的は大きく5つに分類できるということだ。ここでいうデータとは定量的なデータだけではなく、文章などの定性的なものも範囲に入れている。

【図表2】データ活用の5つの目的

201608図2

 

先ほどの自動車ディーラーの顧客データの例は、マーケティング施策に繋がるものである(目的2)。

顧客との関係づくりから提案、受注に至るような営業プロセスに関するデータがあった場合、営業効率の低下の原因を突き止めて手を打つようなことも考えられる(目的3)。

更に分析を進めて、営業担当者による営業効率のバラつきをつかむことで、教育や評価といった人材マネジメントに活用することも可能である(目的4)。

また、テリトリーとする地域の人口や保有台数などのデータと、人件費、賃借料、水道光熱費などのコストデータを分析することで、その営業所が収益を上げていける状態にあるかどうかを評価して、場合によっては統廃合を決めることもあるだろう(目的5)。

これまで自動車ディーラーの視点で考えてきたが、自動車メーカーにとっては、顧客の情報を商品の企画に活かすこともできる(目的1)。

 

活用されないデータの収集や管理が、莫大なコストやロスを生む

ここまでは、データの可能性を広く捉えようという意識で進めてきた。しかし、実際にデータを活用することは簡単ではない。目的を明確にして、その目的に合ったデータを定義して、蓄積・管理しない限り、具体的なアクションには繋がらないからだ。

システムの刷新時には、「このデータもあった方が良い」「何かに使えるかも知れない」と管理すべきデータが脹らみがちだが、多大な損失を招く恐れがあると考えるべきだ。データの入力やメンテナンスなどに費用が掛かることはもちろんのこととして、不毛な検討や議論に時間を割かれることになるためである。「データがあるから分析しよう」「分析したところ、このような事実が分かった」と分析結果を報告する。報告を受けた幹部が、「なるほど。それは面白い結果だ」「やっぱりそうか。私が考えていた通りだった」と興味を示すものの、具体的なアクションに繋がらないことも珍しくない。

アクションに繋がらないデータや分析は悪である。今回紹介した5つの目的をもとにして、既存のデータの活用機会を再確認することをお勧めしたい。本当に活用できるデータを見極め、成果を出すための意思決定やアクションのスピードを高めることで、事業の強化につなげていただきたい。

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●大國仁(おおくに・じん)

東京工業大学大学院修了後、三菱自動車工業でマーケティング戦略策定や新型車の立ち上げに関わる。戦略系コンサルティング会社のジェミニ・コンサルティング (現Pwcストラテジー)などを経て、2002年11月ジェネックスパートナーズの設立に参画。大手サービス業や自動車メーカーなどに対して、シックスシグマ・ウェイを活用した全社変革支援を経験して独立。学生時代はファミリーレストランで5年間アルバイトとして働いた経験があり、業績の良い店舗と悪い店 舗を運営する店長の違いについての実体験をもってサービス業を支援している。

●株式会社ACWパートナーズ
企業の永続的な成長を、パートナーとして支援する経営コンサルティング会社。
社員の方々が自律的に動き、組織として成功体験を積みながら、自社独自のウェイを強めていくための各種サービスを提供する。
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