コラム

店舗を一歩一歩強くする~ いかに実態に合った店舗運営を実現するか ~

 

店舗運営は、会社経営の第一歩。だから難しい

多くの店長が悲鳴をあげている。

「毎日の業務をこなすだけでも大変だ」
「人不足が続いて、休みが取れない」
「改善点が多すぎて、何から手をつけてよいかわからない」
「上司にうまく相談ができない」

一歩一歩進んでいくために、店長として実行すべきことに優先順位をつけることは難しい。店長自身が余裕を失っているからだ。店舗を支援するスーパーバイザーやエリアマネージャーも店舗の状況に応じた的確なアドバイスができていないと感じていることも多いようだ。

こうした事態に陥ることは当然のことかも知れない。アルバイト数十名をリードし、店舗を切り盛りする立場にあるとしたら、ちょっとした会社を経営することに近い。

これまで筆者は、日々努力する店長、そしてその店長を支援・指導する方々の役に立てればと試行錯誤を続けてきた。本レポートでは、その試行錯誤によって得られた店舗運営の強化方法について紹介したい。

 

しかるべきステップを踏み、店舗にあった運営計画を立てることが大切

忙しい中でも焦点を絞って店舗を運営するためには、現状把握から特に重要な問題を突き止めて、店舗強化の方向性を決めた後、具体的な強化策に落としていくことが大切である(図表1)。

【図表1】店舗の強化方法を具体化するためのステップ

201607図1

結 果を急ぐあまり、いろいろな施策を考え、あれこれ着手してしまう。そして、その施策の意図がメンバーに十分伝え切れない。また、1つの施策による効果や達 成感が得られないうちに、次の施策へと切り替える。こうしたことの繰り返しによって、さらに余裕を失うことに繋がることが多い。まずは、店長やメンバー、 そしてスーパーバイザーやエリアマネージャーといった関係者が、店舗の現状について共有することから始めることだ。「急がば回れ」である。

 

ステップ1:店舗運営に必要な視点をもとに、店の状態をつかむ

店長に対して「店はどう?」と質問したら、いろいろな答えが返ってくるだろう。または、戸惑ってしまうかもしれない。業績のこと、メンバーのこと、お客さまのこと、答えは様々だ。

店舗の状態をつかむために、店舗運営に必要な4つの視点で考えると便利である(図表2)。

【図表2】店舗運営の4つの視点と効果的な質問例

201607図2

1つ目は「お客さま志向」、そのお客さまにサービスを提供する「業務プロセスの効率性」、その業務を担当する「チーム・メンバーの状態」、最後に全ての基礎となる「店長の信頼度」である。それぞれの視点において、図表2で例示したような質問をしてみるとよい。

ここでは、「どうすべきか」は考えず、「今どうなっているのか」の確認に徹することだ。

 

ステップ2:問題をはっきりさせて店舗強化の方向性を決める

4つの視点で「今どうなっているのか」を確認したら、問題をはっきりさせる。そのためのヒントになるのが丸太モデル(図表3)だ。

【図表3】店舗の問題をはっきりさせる

201607図3

店 舗運営の4つの視点を丸太で表現している。「店長の信頼度」の上に、「業務プロセス」と「チーム・メンバーの状態」が並び、その上に「お客さま志向」が、 2枚の板によって3段に積み上がっている。それぞれの丸太は、状態が良ければ太く、悪ければ細くなる。また、「業務プロセスの効率性」と「チーム・メン バーの状態」のバランスが崩れると、「お客さま志向」は転がり落ちてしまう。このように図にしてみると、店舗運営の全体像をつかめるので、店舗強化の方向 性を考えるのに役立つ。

それでは、どのように店舗強化の方向性を決定すればよいのだろうか?

店舗の運営状態には、店舗それぞれのレベルがある。そのレベルに見合った強化策を考えるためのチェックポイントがある(図表4)。

【図表4】店舗のレベルに見合った店舗強化の方向性を決める

201604図4

チェッ クポイント①~③の順(実線矢印)に考える。全ての活動は、店長とメンバー間の信頼関係が前提となる。店長の信頼度が低いとメンバーは力を発揮してくれな いため、まずは店長の信頼回復に努める必要がある。店長が信頼されている状態であれば、次に業務の効率性とチーム・メンバーの状態のバランスをチェックす る。最後がお客さま志向の度合いである。

「お客さま第一」という考えから、お客さま満足をより高めることを方針として打ち出したくなるかも知れない。しかし、店舗によっては、業務プロセスやチーム力の強化といった足場固めを方針として強く打ち出し、結果としてお客様満足を高めていくことも大切である。

 

ステップ3:強化方法を具体化して運営計画を立てる

店 舗強化の方向性が決まったら、あとは具体的な方法に落とし、計画を立てる。例えば、「お客さまからのより高い満足を得る」を方向性とした場合、そのお客さ まのために「無駄を減らしながら、チーム力を強める」ことも、土台として「メンバーからの信頼を得る」ことも必須である。つまり、状態が良い店舗ほど強化 方法を検討する範囲が広くなる。(図表3)

そして、「何をどうしたいのか」、「どのような指標をどこまで改善するのか」、そのために「誰が」「いつまでに」「何をするのか」を明確にして、具体的な強化方法として計画に落とす。

 

短期的な結果を追いすぎず、店舗が本質的に強くなるように支援する

以上、あくまで1つの方法として紹介したが、その方法を考案した意図は次の通りである。

·店舗のレベルにはバラツキがあるため、1つの基準を全店に適用すること自体に無理がある

· 結果を急ぐあまり、店舗の状態をなかなか見極められないことが多い

·店舗を強化するためには、店舗のメンバーのチーム力に配慮する必要がある

経営者や本部関係者は、現場から離れたところで、店舗の管理計数や報告書といった限られた情報で判断する立場にあるために、結果を急ぎたくなる。経営者には、社員の生活を守らなければならないという重圧もかかっている。

しかし、短期的な結果を追いすぎると、店舗のレベルに合わないことを課すことになる。そして、多くの店舗が疲弊し、あきらめ感が蔓延することで、業績がさらに悪化してしまうこともある。

つまり、数字を追いすぎると、数字は逃げていくことを肝に銘ずるべきである。

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●大國仁(おおくに・じん)

東京工業大学大学院修了後、三菱自動車工業でマーケティング戦略策定や新型車の立ち上げに関わる。戦略系コンサルティング会社のジェミニ・コンサルティング (現Pwcストラテジー)などを経て、2002年11月ジェネックスパートナーズの設立に参画。大手サービス業や自動車メーカーなどに対して、シックスシ グマ・ウェイを活用した全社変革支援を経験して独立。学生時代はファミリーレストランで5年間アルバイトとして働いた経験があり、業績の良い店舗と悪い店 舗を運営する店長の違いについての実体験をもってサービス業を支援している。

●株式会社ACWパートナーズ
企業の永続的な成長を、パートナーとして支援する経営コンサルティング会社。
社員の方々が自律的に動き、組織として成功体験を積みながら、自社独自のウェイを強めていくための各種サービスを提供する。
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